「お茶の間にもマーケティング思考を」という事で、今回は80年代お茶の間を騒然とさせた「おしりだって洗って欲しい」TOTOウォシュレットのCMから現在の状況まで考察してみたいと思います。今日からアナタもお茶の間コピーライターの仲間入りです。
・今日から使える家庭でのコピーライト
・日本コピーライトの歴史
・背理法を使ったコピーライトの導き方
・説得するには、不安を売るか?気づきを売るか?
ここらへんの気づきがあれば、生活がぐっと楽になるでしょう。
では、いってみましょう
ウォシュレットの歴史
今では当たり前となった温水洗浄便座
では、1992年当時はというと普及率も20%以下で使ったことも無い人が多かった時代です。
元々、温水洗浄便座は1964年 伊奈製陶(INAX現LIXIL)が日本で初めて輸入販売を開始したんです。その後後追いでTOTOが輸入販売を開始しました。当時は医療・福祉向けの設備として痔の治療目的で使用されてました。
国産温水洗浄便座も日本初はLIXILです。1967年10月に国産初の温水洗浄便座「サニタリーナ61」を発売しました。それから遅れること2年、1969年から「ウォッシュエアシート」という名で生産を開始しました
先行していたLIXILに無くて、TOTOにあったもの
現在、温水洗浄便座=ウォシュレット(本来ウォシュレットはTOTOの商標です)とまで認知されトップシェアをとったのは何故か?
それがコピーライトの力「おしりだって、洗ってほしい」ではないでしょうか
1982年9月 「おしりだって、洗ってほしい」CM放送
ウォシュレットの販売開始から15年、泣かず飛ばすの温水洗浄便座、一部の痔主(痔を患っている人)からの支持はあったが世間認知は低い状態でした。
そこで例のCMが流れ、世間の話題をさらいました。
このCMは、あえて夜7時過ぎの家族団らんの時間に集中して放送しました。
食事中に戸川純さんが「おしりだって、洗ってほしい」と語る姿にクレーム殺到
食事=インプット、排泄処理=アウトプットと考えると理想の放送時間だと思いますが、お茶の間の意識を変えるには時間がかかったみたいです。
しかし、15秒から30秒くらいのCMで、お茶の間の意識を変えるには短くても印象に残る力強いフレーズが必要でした。
コピーライトの神様 中畑貴志の存在
それを実現したのが、神コピーライター中畑貴志(なかはた たかし)さんです。
仲畑 貴志(なかはた たかし、1947年8月20日)京都府京都市生まれ。東京コピーライターズクラブ会長。仲畑広告制作所・仲畑広告映像所主宰。宣伝会議コピーライター養成講座校長。株式会社ナカハタ社長。コピーライターブームの立役者となった一人として知られる。「コピーライターの神様」と称される。
今日は、この中畑貴志さんだけでも覚えてもらっても良いです。
名前は知らなくても、一度は聞いたことのあるコピーライト満載です。
その中で有名なキャッチコピーと個人的に好きなやつを紹介します
- みんな悩んで大きくなった。(サントリー)
- 働いているお父さんより、遊んでるお父さんのほうが、好きですか。(サントリー)
- 知性の差が顔に出るらしいよ……困ったね。(新潮社)
- キミがつらそうだと、あのヒトもつらい。(リクルート)
- キミが幸せになっても、誰も困らない。(リクルート)
- キミが幸せだと、よろこぶヒトは多い。(リクルート)
- 大人の気持ちが、子供にわかって、たまるか。(ワールド ゴールド カウンシル)
- 昨日は、何時間生きていましたか。(パルコ)
- ケンカはやめた。だから、もう負けない。(パルコ)
- 顔は、ハダカ。(コーセー)
- ソニー製ではない。ソニー生まれである。(SONY/AIBO)
- 反省だけなら猿でもできる。(大鵬薬品工業)
- 目のつけどころが、シャープでしょ。(シャープ)
- ココロも満タンに、コスモ石油。(コスモ)
いやぁ中畑さんTwitterやったら確実にフォローするレベルでしょ
検索したら1フォロワーしかいない中畑貴志さんしかいませんでしたが
短い言葉で、社会に気づきを与えていますね
「目のつけどころが、シャープでしょ。」なんて企業スローガンにもなってましたからね
2010年から「目指してる、未来がちがう。」にスローガン刷新されてからのシャープと言ったら
これだけが原因では無いと思いますが、ひどいもんです。
今なんて「Be Original.」ってさらに迷走感が漂ってます。
その後のCM展開
その後も、中畑氏と戸川純さんとのタッグで積極的にCMを打ち出していきます。
「人の、おしりを洗いたい。」1983年~
「ナニを隠そう、おしりもきれい。」1985年~
「やっぱり、おしりは締まり屋さん。」1986年~
「好きな人のもにおうから。」1988年~
「きたない生き方はイカン」1988年~
「絵を買う気持ちと、花を選ぶ気持ちと、 TOTOを使う気持ちが 近くなりますように。」
「「人間は、全員疲れているのだ」と仮定する。」
当初おしりを「拭く」ものから「洗う」ものであるとお茶の間の意識改革に成功すると
普及率の増加と共にキャッチコピーも変わっていきます。
ただ、中畑さんのすごいところは、一切競合の比較や悪口を言わないところです
人と人の中にある感情を引き出し、消費行動に繋げようとしているとこが今の時代から見てもすごいなと感じます。
広告って要するにただの自慢だと思うのですよ
「うちの商品はここがすごい」「他社ではできないここができる」
だからコレを買え的な
営業でも同じなのですが、自社の自慢話や他社の悪口ばかりの営業マンって結局売れないのですよ
それより、顧客の見えていない課題に気づきを与える事ができる営業が売れる営業マンだと感じます。
そのころライバル企業は?
TOTOがウォッシュエアシートから「ウォシュレット」に名前を変えたように
INAX(現LIXIL)もサニタリーナから「シャワートイレ」と商標を変えており先駆者として巻き返しを図っているところでした。
同時期のCMはゴリラを使った洗浄力をアピールしたCMでした。
ゴリラ!インパクトはありますね
「新トイレ感覚論」
「快感の洗浄力」
「垂直シャワーのシャワートイレ」
「もうシャワートイレじゃなきゃしたくない」
「快感突き上げる洗浄力」
はい、先駆者から2番手の道を歩み始めました。
マーケットチャレンジャーが取る道とすると間違ってはないと思うのですが
差別化ポイントとして、「洗浄力」を全面に出して勝負しているのでしょうけど
消費者が求めている事は、当時洗浄力ではなかったと言うことでしょう
温水洗浄便座黎明期では、まず「おしりを拭くことから洗うこと」へ文化を変える事を目的においた
TOTOに軍配があがったんだと思います。
温水洗浄便座の現在
それでは、現在はどのようなシェアになっているでしょうか?
温水洗浄便座マーケットシェア率
TOTO(54%)
リフォーム産業新聞調べ(2013年)
LIXIL(24%)
Panasonic(10%)
半分はTOTOが占めています
しかし、これは国内だけのシェアで何故世界に広がっていかないのでしょうか?
おしりを洗いたくなく拭きたい理由は何でしょうか?
海外の普及率をみると
アメリカ 10%未満
中国 5%
一番高い国はお隣、韓国だと思います。体感60%くらいでしょうか?
(データが探せなかったため天狗の体感です)
海外でこのキャッチコピー「おしりだって、洗って欲しい」で普及しないものでしょうか?
ここでは地域ならではの参入障壁があります。
ちょっと仮設も入ってますが
・バス・トイレルーム内に電源がない
・軟水では無くカルシウムが多い硬水なのですぐ詰まる
・「自分のケツは自分で拭く」事が男らしいと言うマインド
・価格が高い(普通便座2,000円に対し80,000円とか)
・そもそも便座が無い(盗まれるから)
・盗難されそう
・そもそもトイレが無い・もしくは井戸水
など、生活インフラが整っている日本に住んでいると考えにくい状況が想像できます
「う○ちだって、一人でしたい」とかいってトイレ個室を売る段階の国も多くあるでしょう
日本が誇る温水洗浄便座を普及させて行くためには、まずインフラ整備から初めて行かないといけないのかなと思います。
あのiphoneだってネットが繋がってないとただの箱ですからね。
ネットはトイレで言うと、「上水」と「下水」といったところでしょうか?
水道の設備がない暮らしをしている人は22億人です
ユニセフ:https://www.unicef.or.jp/news/2019/0093.html
トイレがなく、道端や草むらで用を足す人は6億7300万人です
このような状況でもスマホは普及しているのですから、トイレ市場はまだまだこれから伸びていくのではないでしょうか?
最近おもしろい事情がアメリカでありました。
コロナ渦でSNSでトイレットペーパー不足とデマ情報が流れ世間が混乱した出来事覚えてますでしょうか?
実は、この時、温水洗浄便座がバカ売れしたのです。
どこに行ってもトイレットペーパーがない!⇒温水洗浄便座があれば使わなくて済む!
みたいな思考でしょうか?
この時、TOTOのアメリカ向けの出荷台数が2倍になったそうです。
温水洗浄便座(ビデ)のトラフィックも毎年5,000%づつ増加し普及の足がかりとなりそうです。
まさか、トイレットペーパーが無くなると思わなかった国民が追い込まれた末の結果でしょう
その後すぐにトイレットペーパーの供給が始まりましたが、着実に普及していっているみたいです。
ただ下記のような電源を使わないタイプが多いみたいですが
https://deto-shop.jp/products/38
そういえば、3年前にインドネシアのジャカルタに行った時に、こんな便座もありました
温水はでませんが、洗浄ができる便座の走りかもしれませね
インドネシアは、イスラム圏なので元々おしりを水で洗う(正確にはおしりを洗った手を洗う)文化があるので、ウォシュレットは進出しやすいかもしれません。ただやっぱり、水が悪そうですが。
コロナ渦でリモート会議のZOOMなどが普及したように、文化を変えるイノベーションが起きるキッカケは何か人類に困難がおとずれた時もあるでしょう。
しかし、平時に普及させるにはコピーライトの力が大きくなります。
普及した後は反論を考える
では、次に現代で逆を考えてみましょう
トイレに行ったら手を洗う
ならば、おしりだって拭かずに洗って欲しい
この様な定義をするなら、本当に全員が手を洗っているのでしょうか?
手を洗わない方が15.4%となりました。公衆トイレでみると男子トイレでは体感3割くらいの方が手を洗っていないように感じます。
ということは、「おしりだって洗って欲しい」が成立するのは、15.4%を除く84.6%の方が対象となります。残りの方は、「手も洗わない」=「おしりももちろん洗わない」という図式を無理やり当てはめてみました(笑)とすると、異論あるかと思いますが、現在の普及率80%が頭打ちということにしておきましょう。
では、手洗いの文化をもっと作るなら、お尻も洗うんだから、手も洗ってよって感じでしょうか
逆に洗いすぎても良くないって話も最近聞きませんか?
「あったらいいな」を形にする小林製薬さんがこんなの出してます
そのまんまネーミング「オシリア」です
これ私別のもっと売れるネーミング考えてあるんで
小林製薬さんから連絡きたら教えようと思います
これ一応痔の薬なんですが、ボラギノールみたいに直接痔に訴求してないんです
お尻を洗う文化が定着した日本に洗いすぎも良くないという事を訴えて販売しています
この他にも誰かが使用したノズルは衛生的に使いたくないと言う不には
ノズル洗浄スプレーとかでています。
普及した製品に対してのアイテムを出すなら、このようなアイテムが誰しも考えつくでしょう。
しかし、文化自体を変えようと思った時は、何かしらの歴史的事件があるか、「おしりだって洗って欲しい」のような革新的なキャッチコピーが必要となることでしょう。
有名なスティーブ・ジョブズの初代ipodの「ポケットに1,000曲」のように文化を変えるのは
いつも短いフレーズです。
家庭で使えるキャッチコピー
ということで、文化を変えるには短い力強い言葉「コピーライト」の重要性を感じられたかと思います。
そこで家庭に応用してみましょう
何度言っても手を洗わないお子さんいますよね?
そんな時毎回「手を洗いなさいって言ってるでしょ!」と言われても中々習慣にはならないものです。
そこで
おしりだって洗う時代なのに、手も洗わないなんて
「アナタの手はお尻より汚いよ!」
とか
「う○ちと一緒にごはん食べたいの?」
とかは、いかがでしょうか?
失礼致しました。
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